今月のチーズのお話

2015 September

レティヴァ
レティヴァ

掲載日:2015/09/29

レティヴァ
l'Etivaz

レティヴァ l'Etivaz

産地であるレティヴァ村にはエスティヴァージュ(夏季)の意味があり、5月10日〜10月10日のアルパージュ(夏季高地放牧)期間につくられます。 標高1000m以上の放牧地にてショードロン(銅鍋)を使用、加熱には薪を使うなどの伝統的製法が義務付けられ、外観や保存性、生地の状態、味、香りともに基準に達してはじめてロゴが焼印されるのです。香ばしく、力強いミルクのコクと香りが活きた濃厚な旨みをそなえています。
アルプスの麓の放牧地に点在するシャレで夏の間だけ製造されるレティヴァはスイスの原産地呼称保護制度(AOC、2009年よりAOP)の第一号として2000年に登録され、その名前は一気に知られることになりました。
スイスを代表するチーズといえば、トムとジェリーに登場する穴あきのエメンタールか生産量一位を誇るグリュイエール、フリルのように削って食べるテット・ド・モアンヌ、あるいは近年日本でも大人気のラクレットなどが大御所チーズです。そんな中で、その存在すらあまり知られていなかったレティヴァがAOCを取得したのですから、チーズ業界ではスキャンダルともいえるものでした。
AOCを取得した翌年の2001年の夏と秋に2回、そして昨年夏、14年ぶりに3度目の訪問を果たしました。AOC取得のため、また、シャトーデーにすばらしい共同のカーヴを建設することに情熱を注いできたひとりが、チーズの手配をしてくれるベルナール・ゴダール氏です。
生産者は当時と変わらず今も約70軒。彼らはシャレを1~3つ持っており、雪どけとともに移動放牧が始まります。レティヴァの製造は5月10日から10月10日までと法律では決められていますが、その年の天候によって異なります。雪どけが遅ければ、あるいは冬が早くやってくれば、製造期間は短くなってしまうのです。
アルプスの麓の美しい放牧地、昨年6月は標高1700メートルのレティヴァ協会会長のアンショーさんのシャレの製造を見学させていただきました。薪を燃やし銅鍋で製造するのは昔と同じ、ただ重さを軽減するために、麻布に集めたカードを天井から滑車をつかって型にいれるような工夫がされていました。約40kgの大きな塊を何度もひっくり返して、布を取り替える作業は機械化ができませんから全て手作業で行われます。こうして伝統を守る人がいてくれるからこそ、レティヴァを楽しめるのです。
香ばしく、熟成した味噌のような味わいは日本の古き良き時代を彷彿させます。秋の夜長に日本酒と合わせて、じっくりとお楽しみいただきたいと思います。

100gあたり 本体価格(税抜)1,020円(税込 1,102円)
●AOP ●ハードタイプ ●牛乳製
●1ホール:約25kg ●スイス ヴォー州産