今月のチーズのお話

2018 April

Petit Agour/プティ アグール
Petit Agour/プティ アグール

掲載日:2018/04/18

Petit Agour/プティ アグール

スペインとの国境も近く、伝統が息づくバスク地方。「ここはフランスでもスペインでもない、バスクだ」と人々が口を揃えるほど、特有の言葉や文化が受け継がれてきました。独自の言語(バスク語)はフランス革命によって弾圧されるまで、独自の自治を謳歌していたのです。
美しい草原の中に建つアグール社の創業は1981年。前年の1980年にオッソー・イラティがAOC(現AOP)を取得したことを契機にアグール社は大きな企業へと成長していきました。小さなアグールという意味を持つ「プティ・アグール」が誕生したのは約25年前。バスク地方の羊飼いたちの伝統製法をもとに、スイスの「テット・ド・モアンヌ」にヒントを得てジロールで削れる700gほどの円筒形のチーズがつくられました。外皮の美しいオレンジ色は、エスプレット村で収穫されるAOPをもつ唐辛子「ピマン・デスプレット Piment d'Espelette」がまぶされているためです。
羊乳の旬は11月〜8月までの約9ヶ月間。羊たちはピレネーの山々がもっとも美しい3月〜6月にミネラル豊富な草をたっぷりと食べて過ごします。滋味あふれるミルクからつくったプティ・アグールが約3ヶ月の熟成を経て、もっともおいしい季節を迎えるのが今頃です。
緻密な組織をもつギュッと詰まったしなやかな中身は、ジロールで薄く削ることでふんわりと甘い旨みが広がり、より深い羊乳のコクを感じていただけます。同郷のワイン「イルレギー(Irouleguy)」との相性は抜群。ぜひお試しいただきたいマリアージュです。
現在のアグール社は、創業者のジャン・エチュレク氏より、二代目となる息子のペイオ・エチュレク氏に引き継がれていますが、伝統を守る姿勢が変わることはありません。バスク豚の絶滅の危機を救い、伝統を継承するピエール・オテイザ氏も同様ですが、バスクの人々は深い郷土愛と独自の文化を守り抜こうという意志にあふれています。昨年「日本シャルキュトリ協会」が発足され、日本でも徐々に広まってきたシャルキュトリ(フランス語で肉加工品)。花びらにした「プティ・アグール」とバスク豚サラミ(※)、今月ご紹介しているこちらもアグール社の「アルディガスナ・ピマン・デスプレット」、簡単なピンチョスと、もちろんワインで“プチ・バスクナイト”を開くのも楽しそうですね。“食欲の秋”に向けて、旨みたっぷりの美味しさをお届けいたします。