今月のチーズのお話

2007 January

ABONDANCE FERMIER/アボンダンス・フェルミエ
ABONDANCE FERMIER/アボンダンス・フェルミエ

掲載日:2007/01/01

ABONDANCE FERMIER/アボンダンス・フェルミエ

 「アボンダンス」の歴史は14世紀まで遡ることができます。アルプス地方のあちこちの谷間で製造され、地方によって名称も様々で、統一はされていませんでした。アボンダンスの谷にやってきた修道僧たちは、修道院を建て、チーズの品質をより高めるために乳牛の選択を行なった結果、今日の「アボンダンス牛」が選ばれたというわけなのです。広大な牧草地を開墾し、アルパージュ(夏期高地放牧)のために森を切り開いていったのです。
 乳牛としてだけでなく肉牛としても優秀な「アボンダンス牛」は、サヴォワ地方の重要な牛となりました。しかし、チーズの「アボンダンス」は、生産者も生産量も減少の一途を辿っていました。そんな現状を嘆き、人々から忘れ去れそうになった「アボンダンス」の危機を救ったのは、アボンダンスの生産者たちでした。1990年3月にAOCを取得して以来、生産量は確実に伸びてきています。2005年の生産量は1400トン。63軒の製造者(うち54軒が農家)が登録されています。農家製が多いとはいえ、生産量に占める割合は30%ほどです。
 農家製(フェルミエ)と工場製(レティエ)の見分け方は、側面のカゼインマーク。四角形はレティエ製、楕円形がフェルミエ製です。オート・サヴォワのチーズの熟成に秀でたパカール社のジョゼフ・パカール氏が信頼を置くのは、標高850m、ヴェルト(Verte)谷にあるジェラルド・ノヴェル氏の農場です。彼は、志を同じくするアンドレ・カジェ氏と共同出資して、1980年には45頭の牛たちのために新しい牛舎を建てました。また1994年には新しい製造室を建設し、より品質の安定したアボンダンスを製造するように努力を重ねています。
 また、かつては熟成は牧場内で行なわれるのが常でしたが、10年ほど前にアボンダンスの谷に共同の熟成カーヴを作りました。カーヴでは熟成のプロがAOCの規定である3ヶ月間、磨き、反転をして、世話をしていきます。このカーヴのおかげで農家製アボンダンスの状態は、かなり向上したのです。
 パカール社では、共同カーヴで3ヶ月間熟成されたノヴェル氏のアボンダンスを引き取り、さらに数ヶ月熟成をさせてることにより、アボンダンス本来の力強い味を引き出すことに成功しました。表皮は赤褐色。中身は黄色みの強いアイボリー。アルパージュの農家製アボンダンスを堪能していただきたいと思います。