今月のチーズのお話

2019 September

サン ネクテール (農家製) Saint-Nectaire Fermier
サン ネクテール (農家製) Saint-Nectaire Fermier

掲載日:2019/09/19

サン ネクテール (農家製) Saint-Nectaire Fermier

サン ネクテール (農家製) Saint-Nectaire Fermier 

ローマ時代からチーズづくりが盛んだったオーヴェルニュ地方の、山岳地帯でつくられる千年以上の歴史をもつ「サン・ネクテール」。カゼインマークの形で農家製(フェルミエ)と工場製(レティエ)が区別されています。楕円形が農家製、正方形がレティエ製。皆さまにお届けするのはブリュエル&フィス社のもの、フランス一の規模を誇るランジス市場で1946年以来オーヴェルニュのチーズに特化し、熟成販売を手がけてきました。
 「サン・ネクテール・フェルミエ」は、フランスの中央山塊、オーヴェルニュ地方、ピュイ・ド・ドームとカンタル県の標高800~1,500メートルで製造されます。表皮はグレーに黄色が混ざるカビに覆われています。チーズ初心者はこのカビに戸惑ってしまうかもしれませんが、フランスではルブロッションと二分する人気のチーズなのです。
 AOC(現AOP)取得は1955年とカンタルより古く、協会は品質向上に努力を重ねてきました。ルブロッションと同様に殺菌乳からつくるレティエ製サン・ネクテールが安価で流通していますが、搾乳直後、温かい乳で製造する複雑味がある農家製はやはり人気があります。現在でもサン・ネクテールをつくる農家は345軒も登録されており、その内68軒は熟成販売まで行っています。熟成専門会社は20軒。農家から白い状態で買い取ったものをカーヴで熟成させていきます。
 皆さまにお届けするのはブリュエル&フィス社のもの。フランス一の規模を誇るランジス市場で1946年以来オーヴェルニュのチーズに特化し、熟成販売を手がけてきました。戦後、パリのカフェを利用していたのは殆どがオーヴェルニュ人でした。初代シルヴァンは自転車でパリのカフェにチーズを卸しており、多くのオーヴェルニュ人たちは故郷の味に癒されていたといいます。2代目のアンドレはサン・ネクテール、カンタル、サレールに力を入れ、最高の状態で届けたいと故郷の熟成業者と提携。2015年にアンドレは一線を退き、その意志はランジスの同業者へと引き継がれました。サン・ネクテールは15軒以上もの農家と取引があり、それぞれの味わいを最大限に生かす熟成が行われています。ブリュエルのサン・ネクテールは最高だと、パリの多くのチーズショップのみならず、レストランや食通たちを唸らせているのです。香ばしいナッツ香に秋の深まりを感じていただけることでしょう。オーヴェルニュの美しい景色を想像しつつ味わっていただきたいと思います。