今月のチーズのお話

2019 August

サレール <デュロー熟成> Salers
サレール <デュロー熟成> Salers

掲載日:2019/08/22

サレール <デュロー熟成> Salers

サレール <デュロー熟成> Salers 

外見も製法もよく似ている同郷の「カンタル」との違いは、製造期間が4月15日から11月15日と限られていること、そして無殺菌乳100%の農家製であることです。牛の食んだ甘草(カンゾウ)やリンドウ、ブルーベリーなどの植物や、それらを育てる地質までが豊かなコクを与えるのです。
 カンタルと同じルーツを持つサレールの故郷はオーヴェルニュ地方。そこから南下したオーブラック高原ではライオルがつくられています。起源は非常に古く、ローマ時代よりさらに遡ると言われています。また、AOC(現AOP)認定も古く、カンタルが1956年、続いてサレールとライオルは1961年に取得しています。年間生産量が1,200トンとカンタルの1/10にも満たないサレールは、夏季放牧期間(4月15日~11月15日)に製造される100%農家製のチーズです。放牧期間中はサレールを製造できますが、冬の間はサレールを名乗ることができないため、カンタル・フェルミエで販売されるのです。最近のデータによると生産者は78軒。4500頭の牛が飼われています。
 跡継ぎ問題は世界共通の課題です。2003年、乳の生産者だった父シャルル・コストの跡を22歳で継いだダヴィットは、その後10年の間に牛飼いとして立派に成長していきました。農場にはピー・ルージュ・ド・レスト牛が55頭います。2013年になるとチーズ製造を前向きに検討。オーヴェルニュ大学で地場食材の評価ライセンスを取得したオフェリア・モウリーとの結婚を機に2015年、ガエック・コスト・モウリー社を創立します。こうしてチーズ製造計画を具体化していったのです。それから3年、2018年5月末にサレールの製造を開始し6月8日にはAOP 認証を取得とトントン拍子で進んでいきました。さらに熟成販売のデュロー社への出荷、小売販売も開始。自治体の後押しもあり口コミで評判は広がっていきました。朝夕の搾乳に6時間、アトリエで8時間を要する重労働ですが、顧客の要望に応えるためにクリームやバター製造も開始したいと張り切っています。2019年のコンクールジェネラルでは初出品でなんと銅賞を受賞。これから、ますます注目されるつくり手になっていくことは間違いありません。これほど評判が高くなるのは理由があるからこそでしょう。ダヴィッドの情熱を感じながら、春の若草で製造されたサレールを皆さまに召し上がっていただきたいと思います。