今月のチーズのお話

2019 March

ピコドン Picodon
ピコドン Picodon

掲載日:2019/03/26

ピコドン Picodon

ピコドン Picodon 

ピコドンの名前の由来は「ピカン(ピリッとして)」と「ドゥ(甘い)」が訛ってピコドンと呼ばれるようになったと伝えられます。ドローム県のデュールフィでは、表面のカビを水でごしごしと洗って食べる伝統的な「ピコドン・アフィネ・デュールフィ」があり、地元の人たちにとっては今も人気です。
 ピコドンの産地はリヨンの南、ローヌ川を挟んで西側のアルデッシュ県と東側のドローム県に広がります。貧しかった頃はどこの家でも山羊を飼いチーズをつくっていました。リヨンの市場には出回っていても、パリで最良の状態のピコドンは少なく、まして日本でピコドンを入手することは、非常に困難だったのです。1983年にAOC を取得したときは、産地が明確になるよう「ピコドン・ド・ラ・ドローム」と「ピコドン・ダルデッシュ」のふたつの名前で登録されていました。それが一本化され「ピコドン」になったのは2000年のことでした。ピコドンを入手するのは容易なことではありませんでしたが、2007年にやっとすばらしい作り手に巡り逢えました。
 ドローム県バルドーに農場をもつポザン家です。現在では3代目となるサンドリーヌに引き継がれています。ワイン製造の勉強をしたのち、なんとワイン醸造に11年間も携わっていた、大変興味深い経歴の持ち主。同郷のワインの生産者の元で働いていましたが2009年よりご両親からチーズ製造の手ほどきを受けたといいます。彼女のお祖父さま、ルイ・クラヴェル氏が1950年代にチーズ工房を立ち上げ、彼女のご両親が1968年に跡を継ぎました。当時はもっぱら地元で消費されていたトムをつくり地元で販売されていたそうです。
 AOCが誕生する前ですから、小さなチーズはすべてトムという名称で呼ばれていたのでしょう。サンドリーヌは地元だけではなく、もっと多くの人たちに自分達のチーズを知って欲しい、工房ももっと大きくしたいと熱望していました。そして、パリで開催されるコンクール・ジェネラルに出品、見事シルバーメダルを受賞されたのです。彼女の大きな自信に繋がったのは間違いありません。近隣の農家のミルクも使って製造するようになり規模は少しずつ拡大し、現在は2名の従業員を雇えるまでに成長。地元では今もトムの需要が多いのですが、少しずつピコドンの注文も増えていると聞きます。ミルクの力強さや旨みが充分に堪能できる逸品ですから、日本のチーズ通たちが見逃すは
ずはありません。ぜひ美しい季節にほっくりとした美味しさをお楽しみください。