今月のチーズのお話

2018 April

サルヴァ クレマスコ Salva Cremasco
サルヴァ クレマスコ Salva Cremasco

掲載日:2018/04/23

サルヴァ クレマスコ Salva Cremasco

サルヴァ クレマスコ Salva Cremasco 

ゴツッとした朴訥なイメージの「サルヴァ」。その中身はミルクの旨味をたっぷりと含み、とても繊細な味わいです。最低60日の熟成期間中、定期的に塩水で磨かれる生地はホロリと崩れやすく、上品な酸味とミルクの甘みが感じられます。
 ずっしりと存在感のある正方形、塩水で磨かれた外皮は煉瓦色をしています。ゴツッとした外観からは想像できないほど、中身はホロリと崩れやすい生地をもち、上品な酸味と凝縮したミルクの旨みがたっぷりと感じられる「サルヴァ・クレマスコ」。
 ふるさとは「タレッジョ」や「クアルティローロ・ロンバルド」と同じロンバルディア地方です。ポー川流域の肥沃な平地にはグラナ・パダーノのような大型チーズをつくる大富豪もいましたが、多くの農家は自家用のチーズをつくるために牛を飼い、慎ましく暮らしていました。5月になり牛たちを牧草地に放つと、牛はたくさんの乳を出すため、これを無駄にしないよう大きなチーズをつくったのです。「サルヴァ」は「サルヴァーレ=救う」という意味から来ていますが、長期保存用につくったチーズは、まさに余剰の牛乳を救うことになりました。「クレマスコ」はサルヴァの生れ故郷、「クレモナの」という意味です。
 さて、20世紀後半になると小さな農家は淘汰され、分業化も進み自家用チーズを製造する必要がなくなり、サルヴァは徐々に人々の記憶から消えていきました。クレモナは古くから乳牛の飼育が盛んな肥沃な平野です。チーズ製造の技術も磨き続けられ、その結果大きなチーズが誕生したことや、この地域周辺の遺跡から10世紀頃のものと思われるチーズ道具が発見されたこと、さらに晩餐会を描いた古いフレスコ画にもこのチーズが描かれていることもあり、カザリゴーニ社社長のアルバーロ氏はDOP取得へと動き出すに至りました。2007年3月、彼の努力はとうとう実を結び念願のDOPを取得。指定生産地はクレモナ、ベルガモ、ブレーシァ、ローディ、ミラノ各県を包括した広い範囲です。生産者は8社、また熟成専門会社は15軒と少しずつ増えてはきましたが、それでも生産量は現在でも少ないといわざるを得ません。
 アリゴーニ社の「サルヴァ・クレマスコ」は伝統的な大型チーズで熟成もやや長め。生産者の想いの詰まった希少なチーズを応援したいと思います。優しいミルクの旨みを存分に味わっていただけることでしょう。黒胡椒をふり上質なオリーヴオイルをかけていただくのもおすすめです。