今月のチーズのお話

2017 January

プティ ベルトー Petit Berthaut
プティ ベルトー Petit Berthaut

掲載日:2017/01/24

プティ ベルトー Petit Berthaut

プティ ベルトー Petit Berthaut 

マール・ド・ブルゴーニュで洗われた表皮は香り高く、むっちりとした生地の滑らかな舌触りは格別で、贅沢に丸ごと1個いただきたくなってしまうほど。濃厚な旨味には力強いワインだけでなく、シャブリや日本酒との相性も抜群。
表皮を洗うウォッシュタイプのチーズの中ではもっとも個性が強く通を唸らせる「エポワス」。
16世紀、ワインの銘醸地であるコート・ドール県で生まれたこのチーズは、20世紀の2度の世界大戦を経て、製法技術を継承する人が激減していきました。チーズづくりは農家から工場へと移り、凝固に時間をかける酸凝固タイプは敬遠されるようになります。酵素凝固のチーズになってしまっては伝統が失われると、初代ベルトー社社長のロベール・ベルトー氏は地元農婦から技術を学び、エポワスを復活させ消滅の危機から救ったのです。
ベルトー社が創業されたのは1956年。昨年は記念すべき60周年を迎えました。
フェルミエを創業した頃からベルトー社のエポワスはチーズ商の間で高い評価を受けていました。二代目社長のジャン・ベルトー氏は渋い映画スターのような風貌ですが、話し出したら止まらないほどのエポワスへの情熱を抱いている方です。1991年のAOC取得後は生産量もうなぎ登りでしたが、1999年に起きたリステリア菌汚染事故によりエポワスの信用が一気に失墜してしまいました。ベルトー社のエポワスが原因ではなかったとはいえ、エポワス協会会長であり、主要商品がエポワスだったベルトー社は大きな痛手を負ったのです。この事件をきっかけにジャンは工場に徹底的な衛生管理を施し、3年後には見事生産量を元に戻すに至りました。さらに、主力製品エポワスの他、アフィデリス、エズィー・サンドレなどオリジナル商品にも力をいれるようになっていきました。
2015年、ベルトーブランドはジャンの手を離れ大手乳業会社へと移ることになりましたが、品質の高さは失われていません。定番は250gサイズのエポワスですが、洗う表面積が大きい分だけ濃厚な風味が味わえる60gのプティ・ベルトーも変わらぬ人気を集めています。
ベルトーのラインアップをご存知の方でしたら、プティ・ベルトーがトゥルー・デュ・クリュと同じチーズだと見抜かれることでしょう。木箱入りになったことで乾燥や潰れの心配がなくなり、プレゼントとして選ばれる機会も増えました。ささやかな贅沢をしたいという方にはぴったりのチーズ。ブルゴーニュの銘酒と味わっていただきたいものです。